ゲーム業界の破天荒フェニックス!? メテオライズが目指す「ゲーム業界の連合軍」とは?

はじめに

 2020年、世界的に蔓延した新型コロナウイルス感染症の影響により多くの業界が苦境に立たされた一方、「ゲーム業界」は売上を伸ばした産業の1つと言えるだろう。外出自粛となり生活が一変する中、ゲームが人とつながるツールとして重宝され、Nintendo Switch「あつまれ どうぶつの森」が爆発的にヒットしたことは、多くの人の記憶に残っているのではないだろうか。

活況を迎えたゲーム業界であったが、打撃を受けた企業は少なくない。その一つに熊本でゲーム開発を行う「株式会社アルファ・システム」がある。同社はエヴァンゲリオン、テイルズシリーズ、俺の屍を越えてゆけ、PHANTASY STAR PORTABLEシリーズなど人気タイトルのゲームを開発し、日本ゲーム大賞「優秀賞」やPlayStation Awards「ゴールドプライズ」などの輝かしい受賞歴を持ち、順調に業績を伸ばしてきた。しかし近年は優れた開発ノウハウを発揮する機会に恵まれない状況が続き、2019年には赤字債務超過となり苦しい状況が続いていた。

また、アルファ・システムは後継者不在の課題も抱えていた、創業者であり代表の佐々木氏は60歳を迎えるタイミングであったが、ゲーム業界の技術やトレンドに対応するためには早期に若い経営陣に承継をすべきと考えており、5年ほど前から承継先を探していたという。そして2020年10月に2社の候補先が見つかった。1社はアルファ・システムの収益体制がボトルネックとなり、見送りとなったが、最終的に残りの1社の「株式会社メテオライズ」がアルファ・システムとのM&Aを実行し、2022年には見事大きな利益をたたき出し、いわば再生を果たしたのだ。

メテオライズがなぜM&Aを決断したのか、そしてメテオライズ渡邉氏が目指す「ゲーム業界の連合軍」とは何かをうかがってきた

株式会社メテオライズ企業情報

設立年度 2010年

代表者名 渡邉 幸二

従業員数 50名※資本提携実施前

本社所在地 東京都千代田区外神田6-14-3 VORT末広町IIビル2F

主な開発実績 ヴァルキリードライヴ ビクニ、デカ盛り閃乱カグラ、きららファンタジア、 しろくろジョーカーなど

株式会社アルファ・システム企業情報

設立年度 1988年

代表者名 佐々木哲哉※資本提携実施前

従業員数 51名

本社所在地 熊本県 熊本市 中央区 南熊本 5丁目10-17

主な開発実績 ガンパレード・マーチ、俺の屍を越えてゆけ、式神の城、シノビナイトメアなど

ゲーム開発までの流れ

今、この記事を読まれている人の中で、ゲーム業界に精通している人が多いと思うが、念のためゲーム開発の流れについて簡単にまとめておくことにしよう。

ゲームの開発会社は大きく「パブリッシャー(販売会社)」と「デベロッパー(開発会社)」に分かれている。パブリッシャーは、ゲームの企画・開発から宣伝・販売まで担当しており、任天堂やスクウェア・エニックスなどが挙げられ、名前を聞いたことがあるゲーム会社はパブリッシャーの場合がほとんどである。

一方、デベロッパーはゲームの開発を担当している会社であり、あまり認知されていないが、中には「死にゲー」としてゲーム業界に新たなジャンルを築いたフロムソフトウェアや綺麗な映像と爽快なアクションでプレイヤーに退屈を感じさせないゲームを作るノーティドッグなど、ゲーム好きな人なら1度は聞いたことがあるのではないだろうか。

販売を行うパブリッシャーと開発を行うデベロッパー、この2つそれぞれの強みを生かし、ゲームがリリースされるため、どちらも必要不可欠な存在であることは間違いない。

 

莫大な開発費を投じて作られるAAAタイトル

 ゲーム業界には、「AAAタイトル(トリプル・エー・タイトル)」という言葉がある。明確な定義はないが、莫大な開発費を投じて作られたゲームのこと指し、最近の例であれば、「FAINAL FANTASY」、「バイオハザード RE:2」、「コール オブ デューティシリーズ」などが挙げられる。

このようなAAAタイトルの開発コストは年々上昇をしており、2000年代初頭は開発期間3年、開発予算は10億円程度だったものが、今では開発期間は5年、開発費が100億円を超えるものばかりとなっている。ちなみにCD Projektがリリースした「Cyberpunk 2077」の開発費は約132億円、マーケティングに要したコストを含めると総コストは約360億円と言われている。

この開発費上昇の一番の要因はゲーム機の性能やテクノロジーの進化によるものと言える。美しいグラフィック、リアルな物理表現、多彩なカスタマイズ性が実現可能となり、おそれぞれのパブリッシャーも今までにないハイクオリティーなコンテンツの制作に心血を注いでいるのだ。このように100億円を超える制作費を投じてリリースするAAAタイトルは決して失敗することができないため、開発に携わるためには高いハードルがある。

AAAタイトルに携わるための100人の壁

先述の通り、「AAAタイトル(トリプル・エー・タイトル)」のゲームは5年の歳月と100億円以上を賭けた、絶対に失敗できないギャンブルだ。そのため、依頼するデベロッパー側にも、相応に暗黙の条件を付けている、それが「100人の壁」だ。

ゲームの制作には多くの職種やスキルを持った人材(プログラマー、クリエーター、プロデューサー、ディレクター、プランナー、キャラクターデザイナー、モーションデザイナー)を長期にわたり確保しなければならないことから計画通りリリースをするために、依頼するデベロッパーには100名以上の開発人材を抱えていることを条件とすることが多い。いかに優秀な人材がいる会社であっても、この100人の壁にはじかれてしまうことも少なくないという。

中堅・中小企業が抱える採用課題

 「100人の壁」があるのであれば、人材採用をすれば良いのでは?と思う方がいるかもしれないが、ゲーム業界は慢性的な人不足ということもあり、中堅・中小企業は人材採用が非常に難しい状況なのだ。2022年2月にバンダイナムコエンターテインメントは初任給を23万2000円から29万円(25%)に引き上げ、全社員の月給も平均5万円引き上げ、大手企業を含め人材確保のために待遇を上げるなど様々な取り組みをしているのだ。

日本国内には約2,000社のゲーム会社があると言われているが、大手パブリッシャーの人気は健在であり、任天堂やソニーグループなどの推定求人倍率は50倍を超え、中には100倍を超えている企業もあると言われている。このように大手企業の人気が健在の中、中堅中小企業が優秀な人材を確保するのは非常にハードルが高いのだ。

実は凄い、中堅ゲーム会社の開発力

大手企業が人気のゲーム業界ではあるが、中堅・中小企業の開発力は決して侮ることはできない。大手と中堅・中小企業では、一人ひとりに与えられる業務の質や、裁量に大きな違いがある。大手企業であれば、先述のAAAタイトルをはじめとした、大きなプロジェクトが存在し、推進していくために複数人のチームで取り組んでいくスタイルになることから、個々に与えられる業務内容は限定的かつ専門的なものになることが多い。これはスペシャリストになれる可能性がある反面、部分的な能力しか培われないというデメリットも持ち合わせている。

一方、中堅企業は人材が豊富にあるわけではないため、一つのことに専念できる可能性は低く、一人ひとりにマルチな動きを求められることが多くなる結果として、背景アーティストの社員がキャラクターモデリング、3DVFX(エフェクト)も行うなど、多彩なスキルを持っている社員が存在している。このようなことから、大手企業で開発経験のある方でも、中堅企業ではスキルセットが足りないため、不採用となるケースも少なくないのだ。これらのことからも、一概に中堅企業に比べ、大手企業の個々人の開発力が高いとは言い切れないだろう。

協業を通じて決断したM&A

 前置きが長くなったが、「100人の壁」を乗り越えるためにメテオライズはアルファ・システムとのM&Aを決断した。しかし当時、債務超過かつ営業赤字1億円の企業をグループに迎え入れる決断は非常に難しく、メテオライズも盤石な財務基盤があったわけではなかったため、一歩間違えれば両社が倒産をしてしまうリスクもあっただろう。そのようなリスクの高いM&Aであったため、本当に期待する相乗効果を出すことができるのか、お互いに生き残ることができるのかをしっかりと確認するためにM&Aを実行する前に「協業」を行うことを検討することとなった。

一般的な中堅・中小企業のM&Aであれば、トップ面談の場を設け、相乗効果を確認した後に、買収監査を行い、クロージングを迎え、業務連携を行うことはほとんど無い。無論、当時仲介に入っていた会社からも、意図せずとも人材や技術の引き抜きを行われてしまうのではないかとのことで反対をされたという。しかし、メテオライズの渡邉氏とアルファ・システムの佐々木氏は「必ず最後までやりきる」とお互いを信頼していたことから2ヶ月限定での協業を開始した。

 2ヶ月という短い期間であったが、M&Aを決断するためには十分だったという。東京と熊本と離れた位置にあった両社はチャットツールを活用し、連携を強めていった。協業をする中で、アルファ・システムには優秀なエンジニアやゲームデザイナーがいることが分かり、さらにメテオライズが採用課題を抱えていた中堅からベテランのアーティストが多く在籍していることが分かった。

渡邉氏は「数々の受賞の背景には日々自己研鑽を惜しまない社員の努力があったのに違いない。一緒になれば、それぞれの強みを活かし、同じグループとしてこれから大きな案件も取り組める」と考え、協業を開始したが、その仮説が確信に変わり、それから1か月を待たずしてM&Aが成立することとなったのだった。

営業赤字1億円からV字回復ができた理由

 2021年1月にM&Aを実行してから、1年8カ月が経った現在、アルファ・システムは営業赤字1億円から一転、今期の決算は営業利益5,000万円超で着地をする予定とのことだ。2ヶ月の協業期間でシナジーを確認したとはいえ、異常なスピードで再生を遂げたわけだが、その背景には「効果的な人材配置とチーム組成」があった。

 渡邉氏はまず、PMI(M&A後の統合プロセス)において、メテオライズとアルファ・システムの全社員のスキルセットを確認し、ポテンシャルを引きだせる案件にどのように獲得していくかを考えたという。次に出向可能社員とリモート社員を連携して開発を進める「ブリッジ開発体制」を敷いた。従来のゲーム開発は、一か所に集まって作るのが当たり前だった。しかし、コロナの影響もあり各社がリモートの開発体制にシフトしたことが追い風となり、成果につなげることができたとのことだ。

無論、各社員が着実に成果を上げ続けなければ、良い結果は生まれない。このV字回復は効果的な人材配置と各社員のスキルが有機的な結合をし、グループ一丸となって勝ち得た結果だと言えるだろう。

メテオライズが目指す「ゲーム業界の連合軍」とは

「ゲーム業界の連合軍を作りたい」この言葉は利益率の高い仕事を渡すから、一緒に仕事をしようというわけではない、むしろそれだけでは決して上手くいかないと渡邉氏はこぶしを強く握りながら話していた。

お互いの強みを活かし、社員の成長につながる案件や大きなプロジェクトを取っていくことはもちろんだが、どちらかが上に立つ、「縦」の関係ではなく、共に手を取り合う「横」の関係を築くことが大事だという。

中堅・中小企業には素晴らしい技術力があるが、一方で管理体制や財務基盤など、改善しなければならない点もたくさんある。しかし、先陣を切って営業や開発指揮系統、採用などを行う経営者の体一つでは到底対応しきれない。今回はアルファ・システムの株式を100%譲り受けるM&Aのスキームとなったが、必ずしも資本関係が無ければならないわけではなく、お互いに手を取り合い、高い志を持つ社員たちにとって100%満足のいく環境を作っていく、これこそがメテオライズが目指すゲーム業界の連合軍の形だ。

メテオライズ 渡邉氏からゲーム業界の経営者へ一言

 弊社はちょうどiPhone4 が流行した2010年頃に「スマートフォンゲームであれば、ローコストで開発でき、中堅中小ゲーム会社でもヒット作を産み出せるのではないか」と考え、当時の同僚と共に創業をしました。モバイルコンシューマーゲーム開発、スマートフォンソーシャルゲーム開発を得意としており、昨今のアプリゲーム市場の拡大に対応し、開発基盤の強化、拡張を続け、より先端的な開発技術・開発環境の構築に力を注いでおります。

アルファ・システムは、多数のエンジニア・クリエイターを抱える創業30年を超えるゲーム制作会社であり、式神の城、シスターズロワイヤルといった自社IPコンテンツを抱え、大手ゲーム会社からの開発の受託も多く手がける企業であり、特にコンシューマーゲームの開発等に精通していました。

 今回の資本提携はアルファ・システムの豊富な経験・実績と、当社の先端的な開発技術・開発環境を融合させ、それぞれの会社が抱える総勢100名を超えるエンジニア・クリエイター間のスキル・ノウハウなどの交流を行うことで、多様なプラットフォームに精通した多くの人材を抱える開発会社として、成長する大きなきっかけとなりました。

 今後、ますますデジタルコンテンツの需要は拡大し、当社の抱える案件数も増加の一途をたどっております。当社グループでは、自社グループの抱える人材の力を集結させ、これまで以上のクオリティのコンテンツを制作し、また、従前の体制では対応が難しかった規模のプロジェクトへも積極的に関与し、より良い物を人々へお届けしていきたいと考えております。

 弊社は決して大きい会社とは言えませんし、まだまだ至らぬ点もたくさんあります。だからこそ、お互いに手を取り合って一緒に事業を推進していく仲間が必要です。この「ゲーム業界の連合軍」に少しでも共感いただける方がいれば、ご連絡をいただければ幸いです。これから長い道のりになると思いますが、何年かけてでもこの想いに賛同してくれる同志を募り、最強の「連合軍」を作りたいと思います。

 

買手情報及びM&A検討領域

■企業情報

会社名   :株式会社メテオライズ

設立年度  :2010年

代表者名  :渡邉 幸二

本社所在地 :東京都千代田区外神田6-14-3 VORT末広町IIビル2F

事業内容  :ゲーム開発

従業員数  :100名

売上    :5.5億円 (2022年3月時点)

株主    :大株主 渡邉幸二

主な開発実績:ヴァルキリードライヴ ビクニ、デカ盛り閃乱カグラ

ホームページ:https://www.meteorise.co.jp/

買収ニーズ

・売手事業内容 

(1) ゲーム開発会社

(2) Vtuber運営会社

(3) Web3開発会社

(4) 非ゲーム系開発会社(Webアプリ、システム系など)

・買収予算 :1億円

・エリア  :全国 ※海外案件の検討実績有

・売上規模 :5千万円~2億円

・買収目的 :事業拡大・新規事業創出

・スキーム :株式譲渡、事業譲渡

・買収資金 :自己資金 (場合によっては借入をする)

・評価方法 : EBITDA マルチプル法で評価(5倍が上限)

・決裁フロー:代表の渡邉がM&Aを進め、クロージング前に取締役会で承認を取ります

※上記と全く関連のない領域および代表者が即退任を希望される企業は対象外とさせていただきます。

成約実績

2021年2月8日

株式会社アルファ・システム

https://www.meteorise.co.jp/capital_alliance.html

 

本件に関するお問い合わせ先

担当者 :代表取締役社長 渡邉幸二 様

メール :webmaster@meteorise.co.jp

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